地中海の風をまとうチュニジア猫騎士

地中海の風をまとうチュニジア猫騎士

その猫の名は"アミール"。カルタゴの海辺に近い村で生まれ、青と白の石造家屋に囲まれた路地裏を軽やかに駆けて育った。彼の目には、波のきらめきと歴史の記憶が同居していた。 アミールは代々、騎士の血を引く家系の猫であり、祖先たちはファリスとしてシディ・ブ・サイドの丘を守ってきた。その名を継ぐ者として、彼は幼き日から鍛錬を積み、やがて白きバーンースを身にまとうことを許された。 ある年、古代遺跡の発掘が進む中、禁忌とされた地中に眠る封印が解かれようとしていた。それは、かつてカルタゴの滅亡をもたらした"風の災厄"を呼び戻す儀であった。村の長老たちの懸念を受け、アミールは一人、剣を手に遺跡の中心部へと向かう。 彼の腰にあるのは、騎士団に伝わる湾曲した剣"ファリオス"。かつての英雄が誓いを刻んだその刃は、今や彼の魂の一部となっていた。崩れかけた柱の間を抜け、古代神殿の奥深くにたどり着いた彼は、迷いなく剣を地に突き立てる。その瞬間、黄金に輝く風が舞い上がり、災厄の影は静かに消えていった。 アミールの行動により、村は救われ、彼の名は"沈黙の守り手"として語り継がれることとなった。今もシディ・ブ・サイドの塔には、白きマントをまとい、ファリオスを掲げる猫の姿が描かれており、その下にはこう記されている。 "静けさは弱さにあらず。剣を抜くよりも前に、誇りは心に宿る。"

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