夕陽に誓う — ジャワのクリスを継ぐ猫騎士
その名は"スリ・ガルーダ"。かつてマジャパヒト帝国の王子が命を賭して守ったと伝わる神聖なクリスを受け継いだ猫騎士である。彼は王の血を引きながらも、王宮に背を向け、密林と棚田の間を巡り歩く放浪の守護者となった。
帝国が瓦解し、寺院が苔に覆われても、スリ・ガルーダはガルーダの冠を掲げ、夜明けとともに人々の前に現れた。彼が現れると、不思議と疫病が収まり、争いが鎮まるという言い伝えがある。
あるとき、外地から侵攻した軍勢がバリへ迫った。寺院が燃え、神官たちが祈りを捧げたその時、紅蓮のマントをなびかせたスリ・ガルーダが炎の中に現れた。波打つ刃のクリスが夕陽を跳ね返し、金の鎧は神話の如く輝いた。
その姿を見た敵は「神が現れた」と叫び、矛を投げ捨てて退いたという。それ以来、プランバナン寺院では毎年、彼の名を冠した祝祭が開かれ、バティック模様のマントを着た猫像が祀られている。
伝説は今も生きている。スリ・ガルーダは、祖霊と王たちの記憶と共に、沈まぬ太陽のように人々の心に宿っているのだ。
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