蓮と刃と静寂の守護者
その猫の名は"サムット・ラー"。タイ北部のチェンマイで生まれた銀灰色のコラットであり、王国の平穏を守るべく選ばれし聖なる近衛であった。
幼き頃から、寺院の僧侶に見いだされ、仏典と戦術を併せて学び育った彼は、仏塔の影で瞑想しながらも、剣の舞では誰よりも鋭い眼差しを持っていた。その心には常に、争いの終焉と民の安寧が宿っていた。
クリスの剣は、彼にとって単なる武器ではなく、王より授かった誓いの証だった。波打つ刃に込められたのは"戦わぬための強さ"であり、それゆえに彼は無用な流血を避けるよう心がけていた。
ある日、近隣の国境を揺るがす動乱が起き、神聖な仏塔が侵略者により破壊されそうになった。サムットはただ一人、黄金の鎧を纏い、蓮咲く湖畔を越えて敵の前に立ちはだかった。
彼の動きはまるで舞のように優雅でありながら、刃は稲妻のように正確だった。だが何より彼が人々を驚かせたのは、敵将に向けて語った一言だった。
「争いを終えるために、我らは剣を抜く。されど剣の先にあるものは、命ではなく、悟りであれ。」
その言葉と瞳の静寂に、敵は剣を収め、戦は終わりを迎えたという。今も、タイの山岳寺院ではサムット・ラーの名が"蓮と刃の守護者"として語り継がれ、満月の夜には僧たちが仏塔に蓮を捧げて祈りを捧げるのである。
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