赤き誇りのダトゥ — フィリピン猫騎士の誓い

彼の名は\"アポン・サムダル\"。ビサヤ諸島の戦士階級の血を引く猫であり、祖先の霊と共に戦う\"陽の守り手\"として育てられた。\n\n若き日に村が海賊の襲撃に晒されたとき、まだ半人前だったサムダルは、父の形見である波打つ刃のクリスを握りしめ、恐怖に震える村人たちの前に立ちはだかった。赤いピナ織りのマントが風にはためき、山の頂で太陽が彼の額の羽飾りを照らすその瞬間、村人は一斉に祈りを捧げたという。\n\nサムダルは敵を退けたあと、名誉あるダトゥの称号を授かり、森と棚田の守護者となった。戦を重ねても、その眼差しにはいつも静かな慈愛が宿り、猫たちは彼を\"光を携えし者\"と讃えた。\n\n今では伝説となったその姿。雨上がりの山中で霧が晴れた時、遠くバナハウ山の向こうから彼の影が現れるという。背に太陽、手には誇り高きクリス。\n\nそれは、かつて命をかけて守った民と大地への、終わることなき誓いだった。