カズベキの誓いを刻むジョージア猫騎士

カズベキの誓いを刻むジョージア猫騎士

その猫は"バフタング"と呼ばれていた。ゲルゲティの高台に立つ修道院のそばで生まれ、修道士たちの祈りと葡萄の蔓に包まれて育ったその灰色の猫は、誰よりも静かで、誰よりも鋭い目を持っていた。 山岳地帯に響く鐘の音と共に、彼は修道士たちと共に祈りを捧げ、訪れる旅人の足元でじっと耳を澄ませていた。だがその地にも戦火の兆しが忍び寄り、村人たちは怯えを抱きながら暮らすようになっていた。 ある夜、バフタングは谷を越えて進軍する影を見つける。それは略奪を目論む山賊の一団だった。誰もが震える中、バフタングは古びた甲冑と短剣"キンジャル"を背に、山を下りた。 鎖帷子と黒革の胸当て、赤いマントを翻し、霧の立ち込める早朝に彼は一人、山の道に立った。その小さな体に宿る威厳に、山賊たちはなぜか剣を抜けなかった。光を弾く鋼の兜の下、バフタングの目には恐れも怒りもなく、ただ"誓い"があった。 その後、村人たちはこう語る。「猫の騎士が通ったあの道には、もう争いは近づかない」。教会の壁には今も、赤マントをたなびかせる灰色の猫のフレスコ画が描かれ、その足元にはこう刻まれている。 "キンジャルに刻まれしは、誇りと静けさ。剣を抜かずとも、心を守る者ここに在り。"

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