銀のリボンと秘密の中庭
石造りの古い中庭にひっそりとたたずむ、銀白の猫——名前はルクス。
ルクスは朝の静けさの中、つる草のアーチの下をくぐり、やわらかな光が射す広場に出ました。そこでふと、風に揺れる細い青いリボンを見つけたのです。
「これは誰の落とし物かしら?」と小さな声でつぶやきながら、前足でリボンの端をそっとつまみました。リボンはまるで生きているかのように揺れ、ルクスはそれを追いかけて、くるくると遊び始めます。
けれど、リボンは風に導かれ、アーチの奥へと吸い込まれていきます。ルクスは静かに歩を進め、いつもは入らない奥の中庭へ入りました。そこには、古びた噴水と苔むした石のベンチ。ベンチの下には、色とりどりのリボンが結ばれた箱が隠されていたのです。
それはかつてこの邸に住んでいた少女が、猫と遊ぶために用意していた宝物箱でした。
ルクスは、そっとそのリボンの山の中から一番細いものを首輪に結びつけ、再び光の射す中庭へ戻ります。風がやさしく吹き、ルクスのタッセルが揺れました。
そして今日も、彼女は静かな中庭で、美しい秘密をひとつだけ胸にしまったまま、優雅に遊ぶのです。
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