苔むした井戸と花冠の子猫たち

初夏の朝、森の奥にある苔むした古い井戸のそばに、三匹の子猫たちが現れました。 その中でも一番小さな子猫──名前はミュウ──は、おそるおそる井戸の前に立ち、おねだりのポーズを取りました。「願いの井戸」に、心の中の小さな夢をこっそりと伝えるためです。 レースのチョーカーにピンクの花冠、まるい顔と短いクリンクルの毛に包まれたミュウの姿は、まるでおとぎ話の妖精のよう。姉妹たちも後ろから優しく見守っています。 ミュウの願いは、「もっとたくさんの友達に出会えますように」という小さな希望でした。すると、朝の光が井戸の中からゆらめきながら立ち上り、ふわりとミュウの鼻先に触れました。 その瞬間、井戸の縁に咲く苔の間から、小さな花の精たちがふわっと現れ、子猫たちのまわりを舞い始めたのです。 ミュウはびっくりしたけれど、嬉しそうににっこり微笑みました──やがてこの森で出会うすべてが友達になるような気がしたのです。 それ以来、森の井戸では毎朝、子猫たちと小さな精霊たちが仲良く遊ぶ光景が広がっているといいます。そして、ミュウの願いは、森の静けさとともに、そっと叶っていくのでした。