落ち葉と老猫の朝

霧が静かに立ちこめる早朝の石畳の小道。蔦のからまる古い石壁の前に、一匹の老いたペルシャ猫が座っていました。名前はエドワード。長く生きてきた彼の毛並みは絹のように柔らかく、琥珀の瞳には幾重もの季節が映っています。 その朝、彼はツイードのキャップをかぶり、片目には真鍮のモノクルをかけて、ただ一枚の舞い落ちる葉をじっと見つめていました。風に揺れるその葉は、まるで長い人生の記憶を映すかのようにひらひらと舞い、エドワードの前足にそっと落ちてきます。 「またひとつ、季節が巡ったかのう。」と、誰に語るでもなく、つぶやくエドワード。その声には、寂しさではなく穏やかな受け入れの響きがありました。 やがて朝の霧が晴れ、石壁に差し込む光が彼の金色の毛を優しく照らします。エドワードはそっと立ち上がり、落ち葉の上を静かに歩き出しました。人生の次のページをめくるように、一歩ずつ。 そしてその姿は、やがて霧の向こうへと溶け込んでいったのでした。