霧の庭園と黒猫たちの夕暮れ
その庭園は、誰もが忘れてしまった古い館の裏手にありました。石畳は苔に覆われ、静かな霧雨が柔らかくすべてを包んでいました。
その中央で、一匹の老いたボンベイ猫がそっと前足を顔に添えて毛づくろいをしていました。彼の名はミロ。艶やかな漆黒の毛並みに、鈴のついたレースの首輪が優しく揺れていました。
ミロのまわりには、かつての仲間たちが集まっていました。みな同じ漆黒の姿。けれど、ミロの目だけがどこか遠くを見つめ、金色の瞳に淡い記憶の光が灯っていました。
かつてこの館に住んでいたおばあさんとの日々、暖かな手、優しい声、膝の上でうたた寝した午後——。
「明日もまた来ようか」
一匹の若猫がぽつりとつぶやきます。
ミロは答えず、ただ一つ、小さく鈴を鳴らしました。それは、風のように静かに鳴り、霧の中へと溶けていきました。
そうして彼らは、夕暮れの中で一つになり、過去と今をやさしく結ぶ、黒猫たちの静かな物語となったのです。
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