夕暮れ書斎と老猫の時計
秋の夕暮れ、古い書斎には静かな時間が流れていました。本棚には古びた書物が並び、窓の外には赤く染まった山の稜線がのぞいています。
そこに佇むのは、一匹の老猫。名前はアーデル、メインクーンのご婦人です。緑の手編みセーターをまとい、首からは年季の入った懐中時計がゆらゆらと揺れています。
アーデルはゆっくりと前足をのばし、背をぐっと反らせて伸びをしました。時を刻むその姿は、まるで書斎の時の番人のよう。時計の針が「カチ、カチ」と静かに鳴るたびに、昔の日々の記憶がふわりとよみがえります。
若いころ、アーデルはこの書斎の主と毎日一緒に過ごしていました。彼が本を読むあいだ、そっと足元で丸まり、考えごとをしていたのです。主はもうこの部屋にはいませんが、アーデルは今日もここにいます。
「時は流れても、わたしの居場所はここ」
そう語るように、アーデルは小さく目を細め、再び本棚の影へと身をゆだねていきました。書斎の空気は、今日も変わらず、優しく穏やかに満ちていました。
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