雨の日の贈り物
秋の森の入口、小さな石畳の道に、赤いフードをかぶった三毛猫のリリィが静かに座っていた。
その日も雨がしとしと降っていて、人の気配はなく、ただカサカサと落ち葉が風に舞っていた。
実はこの森には、不思議な言い伝えがあった。
「雨の日に現れる赤いフードの猫に出会えた者は、大切なものを取り戻せる」と。
その日、森の向こうからひとりの少年が歩いてきた。
彼は、大好きだったおばあちゃんとの思い出の場所を訪れていたが、心は寂しさでいっぱいだった。
リリィはまっすぐ彼の前に歩み寄り、まるで「こっちだよ」と導くように、しっぽをふわっと振って森の奥へ進んでいった。
少年は半信半疑でついて行く。
雨のしずくが葉をたたく音の中、二人の足音だけが響いた。
やがて、昔おばあちゃんと一緒に植えた大きな銀杏の木の下にたどり着く。
そこには小さな木箱が埋まっていた。
中には、おばあちゃんが少年に宛てて書いていた手紙と、手作りの赤いマント。
少年の目から涙があふれ、リリィはそっとその足元に丸くなって座った。
リリィは不思議な存在だった。
けれどそのぬくもりと出会いは、確かに少年の心に、やさしい奇跡を届けたのだった。
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