秋の森で風を嗅ぐベンガル猫たち

その秋の日、森の中の小径は赤や橙に染まり、しとしとと小雨が降っていました。 ベンガルの老猫・リュウは、弟分のカイと共にその小道をゆっくりと歩いていました。リュウの首元には、かつて森で出会った少女にもらった小さなガーネットのペンダントが揺れていました。 「この匂い…懐かしいな。」とリュウはそっと鼻を空に向けて、湿った落ち葉と遠くの焚き火の香りを確かめます。カイはその様子を少し後ろからじっと見つめていました。 昔、まだリュウが若かった頃、彼はこの森で多くの仲間と出会い、時に傷つき、時に笑い合いながらこの場所を守ってきたのです。そして今、老いた彼の背中には静かな誇りと温かい記憶が宿っていました。 「行こうか、カイ。」リュウが振り向くと、カイはうなずき、ふたりは再び森の奥へと歩みを進めました。秋の風が優しくガーネットを鳴らし、葉の舞う音と混ざって小さな音楽のように響きました。 夕暮れの小雨の中、ふたりの足跡は、やがて霧に包まれて見えなくなっていきました。 それでも森は知っているのです。風の中に残るリュウの思いが、いつかまた誰かを優しく導くことを。