江戸の渡し船場に佇むサバトラ猫

朝の大川沿い、渡し船場はすでに活気に満ちている。水面を滑るように進む舟の音、船頭たちの威勢のいい声、その全てを静かに見つめるのは一匹のサバトラ猫『銀之助』。筋肉質な体と青緑色の瞳、首には水玉模様の手ぬぐい、腰には小さな巾着袋――川辺の働き者らしい風格だ。 銀之助は毎朝、舟着き場に現れる。船頭たちは「今日も銀之助が来てくれたな」と声をかける。舟の見送りや荷物の見張り、時には子どもたちの遊び相手にもなる。誰もが頼りにする、町一番の看板猫だ。 ある日、銀之助の鋭い目が水面に浮かぶ何かを捉えると、船頭が素早く気づき、舟の安全を守ることができた。銀之助の存在は、町と川の人々にとってまさに幸運の象徴。今日も江戸の川辺には、彼のたくましい背中と粋な手ぬぐい姿が映えている。